「全く・・・こんな調子でよく赤が着れたもんだな」
突然に冷たい一言が降りかる。
それは紛れもなく、が一番聞きたかった声だった。
の顔が一気に赤くなっていく。
それは失態を見られた羞恥心と声が聞けた喜びの混じった複雑な理由で。
「・・・イ、イザークさん・・・!」
彼の事情、彼女の事情・2
「貴様のような奴がを操縦出来るなど考えられんな」
「・・・はい・・すいません」
「貴様の実力はこれほどか?まさか上官に体を使って・・・とかか?」
「そ、それは・・・!」
クックッという彼の笑い声が無性に響く。
更に顔が熱を持って来るのが厭でも分かる。
ああ、早くこんな状況から去りたい。
彼からこんな言葉は聞きたくない。
その時だった。
「い、言っときますけどイザークさん!」
更に顔が赤くなったを庇うように、がイザークに噛み付くように言った。
「今日のは偶々調子が悪かっただけです。何時ものが本気を出したらもっと凄いんです!!それなのにそんな事・・・!」
「・・・もう良いって!」
「でも・・・!!」
「そうですよ、いくらなんでも今のは酷すぎますよイザーク」
「あ・・・・」
二人を庇うように割って入ってきたのは、若草色の髪をした可愛らしい少年。
たしか、彼もイザークと同僚でニコルという優秀なパイロット。
「・・・ふん、俺はただ思った事を言っただけだ」
「それでもそんな言い方はないでしょう?」
「・・・五月蝿い、黙れ」
「イザーク!」
「・・・は・・・イザークさんが思ってるような事なんてする子じゃないですから。赤を着てるのだってそれは彼女の実力です」
「そんな事・・・俺だって分かっている」
「すみません、イザークがああですから・・!後でちゃんと言っておきますんで!」
「あ・・・いえ・・・」
ニコルはそう言って、先に行ってしまったイザークを追いかけた。
「!」
「え?」
「何なの、あの人!やっぱり噂通り性格最悪じゃない!あんな人止めときなさいよ!!」
「で、でも・・・」
「あの緑の髪の人ならまだ分かるけど・・・イザークさんは絶対止めといた方が良いって!」
「で、でもね、!あたしは、イザークさん・・・本当はすごく優しい人だと思うの」
「そんなの見た目だけじゃない!」
「ううん・・・アカデミーの時から見てたから分かる。彼の目は、人に注意する時でもすごく優しい目をしてた」
「・・・・が」
「ん?」
「がそんなに言うならあたしはもう何も言わないけど・・・」
正直イザークにあんな事を言われたのはショックだった。
だけどあれは本当のイザークじゃない。
にはそう思えた。
怒鳴られてもいい。
見下されたっていい。
それでイザークがあたしを見てくれるのなら。
訓練を終えたは、軍服のまま自室のベッドに転がり込んだ。
イザークとクレアのキスを見てしまったこんな忌まわしい一日も後、ご飯を食べてお風呂に入ったら終わる。
そう思ったに睡魔が襲いかかり、眠ってしまった。
コンコン。
部屋のドアをノックする音では目が覚めた。
そしてあたしは寝ていたのか・・・と自覚した。
「は、はいっ!」
「すみません、さん」
「え・・・!?」
その声の持ち主は、あのニコル・アマルフィだった。
「え、あ、あの・・・!?」
「ちょっと開けて貰えませんか?」
「あ、ごめんなさい!」
は急いで部屋のロックを解除した。
すると、綺麗な若草色の髪の毛が彼女の目に入った。
「あ、の・・・何かご用で?」
「いや・・・大した事じゃないんですが・・・イザークの事で・・・」
「え・・・?」
「ほら、今日彼があなたに酷い事を言ってしまって・・・僕は怒ったんですけどどうも反省の色が・・・」
「あ、良いんですよ、そんな。・・・ニコルさんは気にしないで下さい」
「でも僕だって・・・」
「大丈夫です。あたしは気にしてないので」
「そうですか・・・下らない事で呼んでしまってすみません。これから夕食ですが、一緒にどうですか?」
「あたしはまた後で行きますんで・・・」
「あ、では失礼しますね」
「はい・・・」
プシューと言ってドアが閉まった。
はニコルが出て行った後、またベッドに横になっていた。
ニコルはの部屋を出た後、高鳴る心臓を押さえ食堂に向かった。
何故心臓が高鳴っているのか。彼はまだその答えに気づいてはいなかった。
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あとがき(言い訳)
いやー微妙な展開になってきましたね(笑)
私的にニコルが出張ってくれて助かりました。
今現在はクレア⇔イザーク←さん←?ニコルって感じでしょうか。
そしてやっぱりシリアスを書くのが楽しくて仕方ありません。笑
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