彼女は何時も突然で。
そんなの、もう慣れてしまったけれど。
でも。
「あたし達・・・もう終わりにしよう」
一瞬、空気が止まった気がした。
F L O W E R
「・・・・は?」
「・・だから、あたし達もう終わりにしない?」
「・・・何故だ」
「・・・・それは・・・」
「それは?」
とイザークの間に気まずい雰囲気が流れていた。
二人はヴェサリウス内でも公認とされるほどのカップルだった。
休日は二人でプラントに戻ってデートをして。
誰も二人の間になんか入れない。
そんな仲だったのに。
別れ話を切り出したのはだった。
「・・・・イザークには・・・関係ない・・っ」
「・・・関係ないことはないだろう」
「これは・・あたしの問題なんだからイザークには関係ないわよ!」
「・・!」
「っ・・・・・」
「・・・貴様はそんな別れ方で俺が納得するとでも思うのか?」
「そんな事は・・・・」
「俺は俺が納得しなければ貴様と別れるつもりはない」
「あたしだって・・・っ」
はそこまで言うと言葉を止めた。
イザークはそれが少し気になったが、が言いにくそうな顔をしたので問いただすのを止めた。
「・・・っとにかく、あたしはイザークとはもう付き合えない!」
「!!」
「・・・・・・・・・・・・・っ!」
はそこまで言うとイザークの目の前から走って逃げた。
イザークは追いかけようと思い足を踏み出すが、その足を止める。
今はを追いかけてはいけない。
何故か、そんな気がした。
「・・・・・・仕方ないじゃない・・・・」
一人部屋に戻ったは呟いた。
「あたしはもう・・・イザークとは付き合えないんだから・・・・・・」
そう言ったの頬には涙が流れた。
その涙は何を意味しているのか。
はしっかりとそれを理解していた。
だって、イザークと別れるつもりなんてなかったのだから。
ただ、これは運命という残酷なもので。
そんな『運命』に逆らえない自分にも涙。
もう一度、イザークの顔を見たい。
あたしは、イザークしか愛せない。
それなのに、どうして。
どうして別れなければいけないの?
あたしはただイザークの傍にいれるだけで幸せなのに。
そんな幸せを奪わないで。
「・・・・・・イザークぅっ・・・・・」
ただ、滂沱した。
自分にもっと力があればこんな思いはしなくて済んだかもしれないのに。
今の自分はあまりにも無力だから。
だから、逆らえないの。
許して。
イザークがあたしを許す分、あたしはあたしを許さないから。
一生、自分を恨んで憎むから。
せめて、イザークは幸せになって。
あたしの事なんか綺麗さっぱり忘れて幸せになって。
これは、あたしからの一生のお願い。
あたし達が付き合いだしたのはいつ頃だったっけ。
たしか、イザークがあたしに告白してきたよね。
あたしもずっとイザークの事が好きだったから即OKして。
その事をすぐに親友のに報告したっけ・・。
幸せいっぱいな日々。
戦争中な今に不似合いなあたしの幸せ。
それをくれたのは他ならぬイザーク。
あたしが上の人に怒られたときも半ば説教しながらも励ましてくれた。
あたしがディアッカやアスランと仲よさげに話していたらイザークは嫉妬して。
その後イザークの機嫌を直すのがものすごく大変だったのを今でも憶えてる。
でもあたしはそんなイザークにもっともっと惹かれていった。
『イザークの相手なんてしてられるのはこのあたしぐらいだよねー。感謝してよね』
そう言ったらイザークは少し拗ねた。
その時はこの幸せがこれからもずっと続くと思っていつもあたしとイザークは笑顔だった。
人前ではあまり笑わないイザークも、あたしのバカな所とか色んな所に笑ってくれた。
イザークの笑顔はあたししか知らないんだ。
ディアッカとかに時々見せる笑顔とは違う。
イザークのこんな笑顔はこの世界であたししか知らない。
そう思うとイザークを独占出来たようで嬉しくって少し笑みが零れてきた事もあった。
独占欲。
そんな醜い感情を抱くほどあたしはイザークに惚れてたんだ。
キスしたのは付き合って結構経った頃だった。
世間から言わせてみると『遅すぎ!』って感じだったけど。
あたし達は何も焦る事なんてないんだからお互いのペースでいけばいい。
それはあたしもイザークも承知の事。
初めて繋がった時はドキドキしてて。
だけど内心すごく嬉しかった。
イザークと繋がれた事が。
行為だけでお互いの仲が深まるってワケじゃないけど。
イザークにだったらあたしの全てを捧げたっていい。
そう、思った。
このままイザークと別れたら、あたしはあたしでなくなるでしょう。
望むもの全てが手に入る世の中じゃない。
望む事が全て現実になる世の中でもない。
だけどこれは誰に強制されるものでもない。
これだけは自分の意思で決める事。
それなのに、何で。
何で、あたしは強制させられるの。
父上や母上はあたしの幸せを犠牲にしてまで名誉の為だけにあたしを悲しませるの?
名誉なんていらない。
地位だっていらない。
イザークといられるのなら、地位も名誉も全部捨てる覚悟なんて初めからあった。
イザークははっきり言ってあたしよりかなり高い身分の人だ。
地位や名誉だけを望む父上や母上はそのイザークのどこに不満があるのだろうか。
親が望む結婚。
自分が望む結婚。
どうして、逆らえないんだろう。
「うっ・・・・イザ・・・ク・・・・・・・」
コンコン。
「・・・・っうっ・・・・、うぅっ・・・・・・・」
「・・・?」
「・・・・・・ふ・・ぇっ・・・!?」
「・・・・・入るぞ」
「えっ・・・!?イザ・・・・!?ちょっ、待っ・・・!」
プシュー。
間抜けな音とは反対に、いつもに増して険しい表情をするイザークがいた。
「・・・・な・・・・によ・・」
「・・・・貴様・・・・・」
「あ、あたしはもう・・・何もイザークに話す事なんてないんだから帰ってよ!」
「話す事などない?はっ・・・・・よくそんな事が言えたもんだな?じゃあその涙は何だと言うんだ」
「!こ、これは・・・・・」
「俺は勿論納得などしていない。貴様だって本気で言ってるとは思えない。そうだろう?」
「え、えらい自信過剰ね・・・」
「・・・・本当の事を言え」
「・・・・・・え?」
「本当の事を言え、と言っているんだ」
「ほ、本当の事って・・・別にそんな大そうな事なんて隠してないわよ」
「貴様の嘘は見苦しい。いつまで俺に隠す気なんだ?」
「・・・・・・・・・・あたしだって・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・あたしだってっ・・・・・本当はイザークと別れたくなんかない!!」
「・・・・・・・・・・・・・」
「でも・・・・・・・・・あたしはもうイザークと付き合う事は出来ないの」
「・・・それは何故だ・・?」
「あたしは・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
「あたしは結婚しなくちゃいけないんだからっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
「・・・勿論そんなの、あたしだって望んでるワケじゃない・・・・・」
「・・・反論は・・出来ないのか・・・?」
「出来ないよそんなの・・・。お父様やお母様に逆らえるワケなんか、ない・・・」
「・・・・・・・・・」
「あたしが無力だから・・・・・あたしにもっと逆らえるくらいの力があったらこんな事にならなかったかもしれないのに・・・・」
「・・・・それはの所為ではない」
「おかしいよね・・・結婚とか、普通は望んでするものなのにこんな強制的に・・・」
「・・・・・・・・・っ」
「知らない人と結婚する為にイザークと別れなくちゃいけないなんて・・・・・・」
「・・・・・・・・・・ッ」
イザークもあたしにつられて泣きそうな顔をした気がした。
次の瞬間、あたしはイザークにベッドに押し倒されていた。
イザークの両手が顔の両側に押さえつけられて、逃げる事なんて許されないような状況。
「が反論出来ないと言うのなら・・・俺が反論してやる・・・っ」
心の底で期待していた。
イザークがこの縁談を壊してくれる事を。
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あとがき(言い訳)
こういう話もたまにはいいかな、と。
イザークはいざとなるとすごい事してくれそうですよね(笑)
後編はたぶん裏になる予定。
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