ア ン バ ラ ン ス




















「無理」

「なんでそう言い切るの」

「誰がどう考えたって無理だ、無理。現実を見ろ」

「あら、見てますよ。だからこう言ってるんじゃないの」

「だとしたらお前ってアレだな、相当可哀想な奴」

「んなっ!!失礼すぎでしょ、オルガ!」

「仕方ないと思うよ、僕も」

「なんでさ?」

「だってなんて正反対のタイプじゃん」

「いやいや、正反対だからこそ憧れるものがあるのだと言いたいんだ、あたしは」

「そういうもんなの?」

「そういうもんなの。例えばくせっ毛の人がストレートヘアーに憧れるのと同じ原理で」

「どうせその内現実の厳しさを思い知らされて俺達に泣きつきに来る事になんだよ」

「残念。生憎あたしは百歩譲って諦めたとしても、絶対オルガなんかには泣きつかない」

「あー、そうかよ」

「ま、その方が僕たちにとっては良い事だけどね」

「・・・。あたしもあれくらい魅力あったら良いのになー」

「気持ち悪い、想像させんな」

「あ、もしかして想像しちゃった?オルガやーらしー」

「ばっ・・・!!ち、ちげーよ!!」

「やーらしー」

「てめっ、クロトも一緒になって言ってんじゃねーよ!」

「だって・・・ねぇ?」

「ねぇ?」

「あー、もういい。この話は止めだ、止め」

「やだね、面白いもん」

「俺は厭だ」

「そんな事僕は知らないね」

「あたしも知らないね」

「・・・・・」

「て言うかシャニ起きないね」

「あいつは何時もだろ」

「まぁそうだけどさ、あたしが此処に居る時くらい起きて紳士らしく振舞うのが男でしょ」

に紳士らしく振舞ってくれる男なんていねーよ」

「同感」

「別にあんた達に紳士らしく振舞ってもらおうなんて思っちゃいないもんね」

「今シャニが起きて紳士らしく・・・とか言ったばっかじゃんか」

「はて・・・何の事だろう、クロト君」

「・・・と話してると疲れる」

「あたしは全っ然疲れてないから安心して」

「何をだよ」

「そう言えばこの前シャニがワカメ工場の人になってる夢を見ました」

「訳わかんねー。ってかワカメ工場って何処だよ」

「それが意外に似合っててさ、もうすっごい爽やかな笑顔でパック詰めしてたよ」

「うわ、気持ち悪!」

「シャニってあれで性格が良ければ結構モテるタイプだと思う」

「こんな状況でモテるも何もないだろ」

「いや、まぁそうだけど」

「大体この艦に乗ってるの、ほとんどが男じゃないの?」

「あ、知ってる?オルガってこの艦の女性搭乗員に何気に人気があるの」

「は?知らねー。つーかどうでも良い」

「嘘吐けや。ほらほら、段々顔が赤く・・・」

「なってねーよ!!」

「わー、筋肉バカが怒ったー!!」

「誰が筋肉バカだ!」

「そんなの、軍服の下にババシャツ着て襟を立てるという新ファッションの君しか居ないじゃないか」

「うるせぇ、黙れ!あとババシャツって言うな!」

「やなこった」

「・・・何の話してんの?」

「あ、シャニ!あんた起きるの遅いのよ!」

「は?知らないし・・・ってか何でが此処に居るのか分からない」

「三人が暇を持て余してないかと思いまして。あたしなりの気遣いね」

「僕まだクリアしてないゲームあるから、暇じゃないんだけど」

「俺も早く本の続きが・・・」

「それより聞いてよシャニ。この二人ったら酷い」

「なんかあったの?」

「あたしがね、バジルール艦長みたいになれるかなって言った時の二人の反応が・・・」

「明らかに無理だろ!」

「失礼ね。人間やれば出来るのよ」

「出来る事と出来ない事があるから・・・」

「クロト。あんたが初めてゲームをクリアした時の感想を述べてみて」

「はぁ?・・・別に普通だよ」

「あー、クロトなんかに聞くんじゃなかったわ!」

「なんだよ、失礼だな!」

「オルガが初めて分厚い本を読破した時とかね、感動したでしょ。人間やれば出来るのよ」

「・・・今が言った事、全部誰でも出来る事だと思・・・」

「何か言った?シャニ君」

「・・・いや、何も」

「女だったら誰でも憧れるよ、あんな美人な人」

「まぁ、それは分かる気もするけど」

「色仕掛けとかしたらクロトなんてすぐに落ちそう」

「なっ・・・!落ちる訳ないだろ、バーカ!!」

「だってクロトって何だかんだ言って子供だし。この際実年齢は置いといて」

「僕は子供じゃねーよ!」

「そうやってムキになるところがまた、ね。でも子供っぽいって決して悪い事じゃないと思うよ、あたし」

「なんでさ?」

「このご時世可愛い男の子って貴重だと思う。クロトみたいなのは一部に猛烈なファンが居そう」

「それってあんまり嬉しくない・・・」

「あ、だったら謝る。ごめん」

「・・・・」

「・・・・」

「な、何さこの空気!?あんた等に似合わない・・・」

「・・・男ってさー、可愛いとか言われると沈むんだよね」

「あ、なんだクロトも立派に男やってんじゃないの。じゃあエロ本とか持ってたりするの?」

「な、なに言ってんだよ!持ってる訳ないだろ!」

「別にお姉さんは咎めたりはしませんよー。この歳は色んな事に興味がある歳だものね、うん」

「何勝手に納得してんだ!オルガだったら持ってるかもしれないけどさ、僕は絶対無いから!」

「クロトてめー、勝手な事言うな!俺だって持ってねーよ!」

「・・・オルガ、俺この前オルガの本棚で・・・」

「あー、あー!!シャニ、頼むからそれ以上言うな!!」

「え、なに、オルガ持ってるの?」

「持ってない!もう何も聞くな!」

「あやしー。オルガってむっつりスケベー」

「うるせぇ!」

「あ、認めた」

「認めてねぇ!!」

「焦ってるし・・・」

「焦ってねぇ!!!」

、オルガの持ってた本っていうのはね」

「うん、うん、何?」

「やーめーろー!!」

「オルガの事は気にしなくて良いから、続けて、シャニ」

「エロ本じゃないけど、純愛小説だった」

「は?マジっすか!?」

「うん」

「おい、シャニ!!」

「へー、オルガがねー。そんな趣味があったとは・・・」

「自分が好きなのはジュブナイル小説だって公表しといて、陰でこそこそ恋愛小説読んでたんだよ」

「うわ、なんかそれって堂々と読む以上に厭」

「ち、違うって言ってんだろーが!!」

「分かった分かった。趣味なんて人それぞれだし、あたしはこれ以上何も言わないよ」

「いや、まぁ・・・じゃ、ねぇ!!」

「あと、さっきはシャニがワカメ工場の人になってる夢を見たっていう話をしてました」

「・・・いや、意味分かんない」

「もし戦争とかが無かったらさー、シャニはきっとワカメ工場で働いてると思う」

「俺はどっちかと言うとCDショップが・・・」

「いや、シャニはワカメ工場の方が似合うから」

「ああ・・・そう。大体何でワカメ工場なの?」

「いや、何となくだよ。別に良いじゃん、キャバクラ行ってそうとか言われるより」

「それは例えが極端すぎるんだよ」

「オルガとかさー、一回キャバクラ行ったら癖になってそう」

「あ、それ言えるー」

「うっせぇクロト!」

「ちょっとクロト、あんたも人の事笑ってられないよ。クロトみたいなのが一番ハマるんだから」

「はぁ!?な、何言ってんだよ!」

「戦前にさ、あたしには普通に男友達が居た訳ね。顔とかは全然似てないんだけど、醸し出す雰囲気が凄くクロトに似てる人」

「そ、そいつがどうかしたのかよ?」

「その人はあたしの友人と恋人同士で、凄く青春チックな恋をしていたんだけど、ある日女の方からふられてしまいました」

「それ僕と全然関係無いじゃんか!」

「雰囲気がクロトと似てるんだろ?じゃあ関係あるじゃん」

「シャニまで何言い出すんだよ!」

「・・・で、その男友達はその後どうなったと思う?」

「・・・自殺?」

「違う違う、シャニ。そんな暗い話題じゃないでしょ」

「その男がもうその人以外愛せないくらいの依存症だったら自殺しかねないと思う」

「いや、まぁそうだけど、ね。違うんだよ。さあ当ててみよう!」

「・・・あ、俺分かった」

「はい、オルガ君!」

「きもいから君とか付けんな」

「うるさい、さあさっさと答えを言うんだオルガ君」

「・・・その男は悲しさのあまりキャバクラにどっぷりハマったとか、そういう話だろどうせ」

「おお、大正解!良く分かったねー、流石ハマりそうなオルガ君」

「こんな簡単な問題、分からないこいつ等が馬鹿なんだよ」

「なんだとぉ!?」

「やるか、クロト!?」

「あー、静粛に。で、話を戻そう。その男友達は残念な事にキャバクラの魅力にとりつかれてしまったのです」

「くだらねー、単なる馬鹿だろそいつ。女なんてその辺にごろごろ居るってのに」

「て言うかそんな奴と僕が雰囲気似てるとか止めてよね」

「・・・君達、馬鹿にしてはいけませんよ。本当に恐ろしいのは此処からなのです」

「・・・恐ろしい?」

「その男友達はキャバクラへ行く金欲しさに遂に消費者金融まで手を出してしまい、借金は膨大する一方・・・」

「・・・なんか、その話現実的すぎ」

「そう、だから恐ろしいのだよシャニ。あんた等も気をつける事ね」

「別に、俺は金無くても寝れれば良いし」

「僕もゲームがあれば良い」

「本さえあればな」

「金欠な人の気持ちは金欠な人にしか分からないものよ。そしてその男友達は最悪な結果になってしまったのです」

「最悪な結果?」

「・・・って、やっぱり自殺じゃないの?」

「借金を返済するために他からまた金を借りての繰り返しで、遂に借金取りに追われる身となってしまいました」

「うっわー、リアル過ぎて怖いってそれ」

「いや、本当の話ね。で、その男友達は結局は夜の仕事で頑張って今も借金返済を目指しています。終わり」

「あ、死ななかったんだ」

「シャニはいい加減その考えから離れた方が良いと思う」

「そういや何でこんな話題になったの?」

「シャニがワカメ工場で働いてるとか何とか・・・」

「で、キャバクラの話になってこの中じゃクロトが一番ハマるっていう話。ああ、オルガも良い勝負」

「いや、俺の事は良いから」

「僕がキャバクラなんかにハマると思うの!?」

「思うね。機会があれば何時か行ってみなよ、良い所だよ多分」

「・・・今の話聞いて誰も良い印象は抱かなかったと思う」

「その男の人ね、本当クロトと雰囲気が似てるの!昔はゲームしかしてなかったしね」

「うわ、まんまクロトじゃんそれ」

「ちょっとシャニ!お前引くな!お前に引かれると何か一番ムカつく!!」

「今の話の教訓はこれね、女に溺れると良い事無いっていう事」

「僕は女になんか溺れない!」

「クロトみてーなお子ちゃまには刺激強すぎて耐えれねーんじゃねえの?鼻血出すなよ、ティッシュ足りるか?」

「うっさいオルガ!そういうオルガだって周囲の目から見たらハマりそうなんだよバーカ!」

「なんだと!?」

「お前なんてどうせ隠れて恋愛小説読んでる癖に!あーきもい!!」

「読んでねーよ!!」

「ちょっとちょっと、乙女の前で喧嘩するのはどうかと思うよ」

「誰が乙女?」

「え、そんなの此処に居るあたししか居ないじゃない」

「寝言は寝て言ってよね」

「なにぃ!クロト・・・そんな口の悪い子にはお仕置きよ!」

「それおっさんの真似!?きもいから止めてよ!!」

「あたしのお仕置きは一味違うわ。・・・まぁ、明日の朝を楽しみにしてる事ね」

、背後から黒いオーラ漂いすぎ」
































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あとがき(言い訳)

この三人は息が合ってないようで合ってると良い。
そして結局は仲良いんだよこいつらーみたいな感じで。
ヒロインはこの三人が相手だと一枚上手いく存在だと良いなーとか
好きな人ほどからかいたくなるという小学校低学年なみの恋愛価値観で。。。