さらさらと風に揺れて靡くのは墓前に捧げるものとは到底思えない真っ赤な花。
その辺から摘んできた証拠と言える不揃いな長さの緑の茎に、少しでも長生きするようにと水を垂らす。
人工の夕陽が辺り一面をオレンジ色に染め上げる。
その色がまるで彼の髪の色と同じだったので、思わず泣きたくなる衝動に駆られた。
彼 岸 花 の 紅 色
『あたしが今日付けでホーキンス隊に配属になった、・。よろしくね』
そう言って差し出した手を、思いっきり振り払われたのを今でも覚えている。
彼は、如何にも厭そうに眉を顰めて口を開ける。
『おい、お前先輩に対してその態度は無いだろ!?』
無常にも宙に浮くあたしの手を、パンッと良い音がするくらい勢い良く叩く。
それに対してわざとらしくいたたたた、と言って手を擦るあたしを見て彼は困ったような表情をした。
どうやら女の子に対する態度はなっているらしい。
『先輩?あんた、あたしの先輩なの?』
先程の表情と一転してそう尋ねると、はぁ!?という心底呆れた声色が返ってくる。
続けて溜め息混じりにふぅ、と右手で額を押さえる彼の姿を見て思わず笑ってしまう。
あたしはこれから彼の悩みの種になる事間違い無しだな、と確信して。
『・・・当たり前だろ?お前より俺の方が先に入隊してんだからよ』
『あー、それ絶対おかしいと思う。えーと、ちょっと待ってよ・・・』
あたしはそう言って如何にも考え事してますーみたいに顎に手を添える。
ちらっと正面に居る人物を覗くと、綺麗なオレンジの色をした髪の毛が目に入る。
『先日あんたの事を少し調べさせてもらいました。それによると確か・・・』
『・・・なんだよ?』
『あたしとあんたが入隊して、赤を着るようになったのはほぼ同時期。ただあたしが違う隊に入ってただけで。
それと成績で言えばあたしの方がエリートですが?あー、生まれた年も同じだし』
『お前なぁ・・・』
『あと、ついでに言うと誕生日的にはあたしの方が早・・・』
『分かった分かった!!敬語使わなくて良い!』
悔しそうにそう言い捨てる彼を見て、あたしは声を上げて笑った。
それに対して鋭い睨みをきかされたので思わず止めたけれど。
それからさっと差し出された手を見てあたしは少しだけ驚いた。
『俺はハイネ・ヴェステンフルスだ。よろしくな』
あたしとは全然違う大きな手の平をまじまじと眺める。
それからあたしは両手でその手を掴んでぶんぶんと上下に振る。まるでアイドルに会ったみたいに。
離せ、馬鹿!と言われたけれどそんなのは無視して振り続けた。
『あたしは・!・・・よろしく!!』
ハイネにざっと基地内部を案内してもらった後、その辺の壁に体を任せながら色々な話をした。
ホーキンス隊に居る女はあたしだけだとか、色々。
じゃああたしって紅一点!?誰かに襲われたらどうしようーと言ったらそれは無いから安心しろと言われた。酷い。
『あー、悪ぃ、俺仕事あるんだわ。今日中に仕上げないといけないやつ』
『え、もう帰るの?つまんなーい』
『仕方ないだろ。お前も自分の部屋帰れよ、じゃあな』
既に背中を向けて後ろ手に手を振る彼を見て、あたしは少しだけそれを眺める。
それから思い立ったように足で壁を蹴って無重力を利用してハイネの所に追いつく。
『・・・なんで付いて来るんだよ』
そう言って振り返った彼の顔は明らかに厭そうだった。
あたしが後ろに付いて来た途端に歩幅を広げやがった。ちょっと酷いんじゃねえの?
だからあたしも頑張って歩幅を広げる。だけどやっぱりそれでも追いつけないから、時々地面を蹴る。
『えーと、夜這いに・・・』
あたしがそれを最後まで言い終える事無くハイネの馬鹿か!?という台詞に遮られた。
その声が予想外に大きかったもんだから、あたしの体は少しだけ強張る。
『あー・・・えーと・・・』
『・・・・・』
『その、悪かったから・・・部屋まで送って行ってやるよ』
『本当!?』
『・・・お前、わざとか?』
『えー、違いますよー?ま、部屋までよろしくお願いね!』
『・・・・・』
会ったのは今日が初めてなのに、そんな雰囲気を感じさせない彼に少し惹かれていた。
嫌々ながらも結局あたしの部屋まで送ってもらう事になった。
仮にも女の子と歩いてるんだから、それの歩幅に合わせて歩こうともしないハイネに少しだけムッとする。
でもあたしの我侭を聞いてくれてるんだから良い奴だという事で一人で解決する。
『いやー、今日はだいぶハイネにお世話になったから一応礼を言います。有難う!』
『一応かよ・・・』
『まぁ、明日からもよろしく頼むね!』
『あー、俺の人生既に暗雲が・・・』
『この様に会えたんだからきっと素敵な人生を送れるわ!じゃあね』
間抜けな音を立てて閉まるドアに凭れ掛かり、ふー、と息を吐く。
いくら今日が楽しくても、明日は戦場だ。
ヤキン・ドゥーエを防衛するのがあたしの任務なのだから。
と言うか、あたしはその為にこの艦にやって来たのだ。
『・・・明日は、生きてる・・・かな』
今日だって膨大な数の人間が死んだのだ。
コーディネイターも、ナチュラルも。
その中にはあたしの大事な親友だって居た。
涙は出なかった。
昨日の彼女は、これで死んでも本望だと笑っていたから。
『あたしは・・・死にたくないよ』
誰に語りかけるでもなく、一人そう呟く。
やり所の無いぐっと握った右手を自分の胸に添える。
こんな事を思う親友を、は笑って迎えてくれるだろうか。
そう思うと、何に対してか分からない涙が溢れた。
『あ・・・ハイネ!!』
翌日、MSに乗ろうとしているオレンジの後頭部と赤を着た広い背中を見つけて、彼の名前を呼ぶ。
するとハイネは、今から戦場へ向かうという危機感なんて全く感じさせない表情で此方を振り向いた。
『・・・か』
『あ、あのね、言いたい事があって・・・』
『・・・ん?なんだよ』
走って此処まで来たせいで、息がぜぇぜぇと切れる。
お前軍人の癖に体力ねぇなーとハイネに言われたので少しムッとする。
いくら無重力でも軍人でも、人間は全力疾走したら疲れるのだ。
そう彼に教えてやりたい。
『・・・死なないでね』
先程までとは違う、真剣な声色でそう言うと彼はふっと笑みを零した。
そしてあたしはその笑みに少し元気を与えられた気分になる。
『死ぬなよって・・・俺達一応昨日会ったばっかなんだぜ?』
『そ、そんなの関係無い!・・・ただ、あたしはハイネに死んで欲しくないだけだよ』
『・・・そうか』
それを言い終えた後、今言った事は実は凄く恥ずかしい事なんじゃないかと思って思わず顔を逸らす。
するとハイネにこっち向けよと言われたので、仕方なくハイネと顔を合わせる。
コックピットの入り口に手を添えて体を支えるハイネの頭から爪先まで視界に入る距離にあたし達は居る。
『・・・お前も、死ぬなよ』
普段から細い切れ目のハイネの瞳が一層鋭くなり、彼はあたしにそう言った。
あたしはそれに対して、うん、と一言だけ返す。
あたしの言葉を聞いたハイネは直ぐに何も言わず背を向けてMSに乗った。
だからあたしも自分のMSに乗って、ハイネの後に出撃した。
気が付けば、すでにどの機体が敵で、どの機体が味方なのかすら分からない状況になっていた。
宇宙にはもう跡形も無い機体や戦艦の残骸が散らばっている。
その中で、まだ原型を把握出来るハイネの機体を発見した時は凄く安心感に浸った。
ヤキンドゥーエ攻防戦は、ヤキンの自爆によって終結した。
その後ザフトは地球軍と和解して、停戦条約が設けられた。
母艦に戻ってハイネの姿を確認すると、あたしは黙って彼の胸を借りて泣いた。
『・・・あたしさぁ、彼岸花が好きなの』
季節が秋の始めに調整されたプラントの川岸で、あたしはハイネと居た。
緑が生い茂る草木の中、酷く映える赤い花。
素直に、綺麗だと思った。
『なんだよ、いきなり』
『ほら、あそこ見てよ。咲いてるよ、一輪だけ』
あたしが指差す方向をハイネが見る。
ああ、咲いてるなとそれだけ彼は言った。
だからあたしは、そんな淡白な反応が欲しかったんじゃないと文句を言った。
『・・・だってさぁ、綺麗じゃない?咲いてるのが一輪だけでも、凄く存在感があって』
そう言うと、まぁな、とハイネは答えた。彼の辞書には淡白という言葉しか無いらしい。
大体そんな返事を返されると、こっちの反応が困るんだ。何て返せば良いんだ一体。
あたしの事も考えてくれ。
『小さい頃は良く、彼岸花を家に持って帰ったら火事になるって言われてたから摘みはしなかったけど』
『ああ、そう言えばそんな話も昔聞いたな。それの根拠は一体何処から来るんだか』
『・・・花弁が真っ赤で、火みたいだからでしょ?』
『・・・そうか?』
『あたしは、そんな色が凄く綺麗だと思うんだけど』
さらさらと吹く風が心地良い。
これが人工物だと思うと、少しだけ悲しくなるけれど。
『・・・あたし達、こうしてると恋人同士に見えるかな』
あたしがそう言った瞬間、ハイネはぶっと吹き出した。
なんだよ、失礼な奴だ。
『恋人って・・・何だよ、そりゃ!あはは!』
『・・・ハイネって失礼すぎ』
『思った事を述べただけだぜ』
『それが失礼だって言ってんの』
まぁ、ハイネの言う事にも一利あるなとは思う。
だって、あたし達は別に恋人同士でも何でもない。
どういった間柄なのかと聞かれれば、きっとハイネは戦友だと答えるだろう。
・・・あたしは、どう答えたら良いのだろう。
『ふんだ。あたしだって将来は良い男を見つけて良いお嫁さんになるもんね』
『の性格で見つかるのかよ』
『うるさーい!見つけてやるよ、ハイネよりも百倍かっこよくて優しい人!』
『そんな奴が居たらそいつの顔を拝みたいくらいだな』
軽く笑うハイネを見て、ちくりと胸が痛む。
きっとあたしは見つける事が出来ないだろう。ハイネより百倍かっこよくて優しい人を。
もし見つけたとしても、その人に恋をする事もないだろう。
だって、あたしは分かってしまってるんだ、あたしのハイネに対する感情が。
とても口には出来ないけれど。
『、そろそろ雨の時間だ。・・・帰るぞ』
『あ・・・うん』
ハイネのオレンジの髪が風に揺られて靡く。
人工の太陽がハイネの髪の色に酷く似ていて、眩しく思った。
また、此処に来ようねと言ったら、ハイネは、ああ、と軽く返事をした。
今度ハイネと此処に来た時には、もっと沢山の彼岸花が咲いてる事を願って。
時が経つのは嫌味なほど早いものだ。
あたしがハイネと連絡をとらなくなってから、もう二年が経つ。
一時は停戦状態にあった地球軍とプラントとの関係は、再び開戦を招く事態となった。
お陰であたしに休む間なんて与えられず、最新鋭艦ミネルバの搭乗員として戦果を収めている。
ミネルバに乗っている間はオーブの代表首長やデュランダル議長が乗ったりと、色々大変な事があった。
同じ赤を着るシンというパイロットは過去の出来事が原因でオーブが嫌いで、艦内で揉め事を繰り返していた。
カガリ・ユラ・アスハが艦を降りた後はやっと平和を取り戻せるかと思いきや、
アスラン・ザラが復隊したりオーブが連合と同盟を結んだりと面倒な事になってきている。
最近はシンもアスランと和解したのか、落ち着いているけれど。
ディオキア基地に着いた後、あたし達は休暇をもらった。
ルナマリアやメイリンみたいに街へ出る事が好きじゃないあたしは、基地内を適当に散歩する。
此処に着いた時にはラクス・クラインのライブで賑やかだった場所も、今では静けさが漂うだけだった。
そこで、あたしは信じられない人物を発見する。
『は・・・ハイネ!!?』
驚きと嬉しさのあまりそう叫んでしまい、はっと口を手で押さえる。
すると、その二年経っても変わらないオレンジの髪を揺らして彼はこっちを振り向いた。
『・・・お前、か?』
『う、うん、そう!なんでハイネが此処に居るの!?』
あたしがあたふたしていると、その間にハイネはあたしとの距離を詰めた。
雰囲気こそ変わらなかったものの、二年経った彼の顔つきは大人びて見えるように思えた。
相変わらず、オレンジの髪が凄く印象的で。
『そりゃこっちが聞きたいぜ。俺はあの後もずっと軍に居たんだよ』
ハイネはそう言うと、親指を立てて自分の胸を指す。
なんだ?と思ってその部分を見ると、FAITHである証拠のブローチが光っていた。
『ハ、ハイネってFAITHになってたの!?』
『ああ、そうだ。ヤキンドゥーエ戦での戦果が認められてな』
『すごーい。あ、でもミネルバにも居たよ、FAITH。それに二人も』
『ああ、ミネルバの艦長と、それと・・・アスラン・ザラか』
『うん、そう。良く知ってるね』
『何を隠そう、俺は休暇明けからその艦に配属だからな』
信じられない人物発見の次に、信じられない事実。
あたしはこれは幻聴じゃないのかと、自身の耳を疑った。
おかしいな、昨日耳掃除した筈だ。
『えっ、そ、それ本当!?』
『嘘言ってどうするんだよ』
『あ、あたし今はミネルバのパイロットなの!』
『はあっ!?』
マジかよ、と続きそうな言葉をハイネは口にした。
そりゃあ信じられない気持ちも分かるけどさ。あたしだって信じられないし。
いや、だけど、今のハイネの言葉は明らかに厭そうだったぞ!なんて奴だ!
『嬉しいでしょ、またあたしと一緒に戦えて』
『はぁ・・・俺ってとことんツイてない・・・』
『昔からのあたしの戦友だという事に誇りを持ちなさい』
『寧ろ腐れ縁ってやつか』
『お黙り』
それからあたし達は昔話に華を咲かせた。
って、なんか年寄りみたいな言い方だけれど。
ハイネと過ごした休暇は、瞬く間に終わりを告げた。
二年ぶりの旧友との再会に、あたしは嬉しさを隠せなかった。
その旧友に、あたしはまだ自分の想いを伝えていない。
今はまだ言う時期じゃないと思う。
だから時が経てば伝えようと決心したこの想い。
今度の戦闘が終われば、伝えよう。
ハイネを加えた初めての戦闘。
黒海での戦闘は苦戦を強いられた。
地球軍とオーブ軍。
その戦力は半端じゃなかった。
悔しかった。どうしてオーブが地球軍なんかに、って思った。
きっと誰もが同じ気持ちだったと思う。
そこで、あたしは初めて自分の目を疑った。
目の前で、ガイアの黒い機体が彼の髪の色と良く似たオレンジの機体を爆散させたから。
あんなもの、即死に決まっている。
かつて、戦場で厭というほど見たこの光景が目に焼き付いて離れないのは、それは。
あたしは、機体を動かす事も忘れて呆然とする。
だって、あの機体にはハイネが。
ハイネが、乗っているのに。
爆散、した?
それって、どういう事?
『・・・何してるんですかっ!撃たれますよ!?』
通信回線越しのシンの言葉ではっと我に返る。
それと同時にあたしの目からは熱いものが流れてきて。
気が付けば、あたしの機体の周りは地球軍の主力戦MSで囲まれていた。
これを、絶対絶命と言うんだろうか。
でもあたしはこの時、死んでも良いと思った。
でも、死ななかった。
シンが、全機を蹴散らしたから。
その後直ぐに地球軍とオーブ軍は撤退していった。
あたし達もミネルバに戻る。
ただ一人、オレンジのグフに乗ったオレンジの髪のパイロットを除いて。
母艦に収容され、コックピットを開けてもあたしはそこから出ようとはしなかった。
出撃前にはあたしの機体の隣で待機していたオレンジの機体が、今は、無い。
ハイネが、居ない。
死んでしまった。
あたしを残して。
耐える事の出来ない虚無感と悲しみに襲われて、あたしはその場で滂沱する。
きっとシンや他のパイロット達にも聞こえていただろう。
そんな事は、どうでも良かった。
ただ、ハイネが居ないという現実だけがあたしを支配していった。
世界の情勢は未だに戦争中だった。
今もこの瞬間誰かが殺して誰かが殺されたのだろうかと思うと不思議な気持ちになる。
とても良い意味ではないけれど。
あたしは軍を降りた。
元々、あたしは柄じゃなかったんだ、軍人なんて。
体力なんて無いし、精神力なんて持っての他だ。
・・・ハイネに言われたとおり。
あたしは、停戦後直ぐに軍を降りれば良かったのかもしれない。
ぶちりと、真っ赤な花の緑の茎を千切る。
そして、もう一本。
それからあたしは丘の上へ向かう。
そっと、川岸から摘んできた二本の彼岸花を墓前に供える。
その石には、ハイネの名前が刻み込まれていた。
ハイネの、生きていた証。
「・・・なんで、死んじゃうんだよ」
自分でも笑えるくらい、震えた声でそう訊ねる。
返事なんて来ないって事くらい、分かっているのに。
当然、返事なんて返って来なかった。
「出撃前・・・じゃあなって、言ったのに・・・!!」
それって、また会えるって事でしょ?
また、生きて帰って来るって事でしょ?
また、笑い合えるって事でしょ?
なら、どうして今はもう会えないの。
「また、来ようねって言ったのに・・・」
嘘を、吐かないでよ。
あたし、嘘吐きは嫌いなんだよ。
「あたしは・・・あんたに言いたい事が、山ほどあった」
あんた、という呼び方は、ハイネと初めて会ったあの瞬間しかしていない。
だからあたし自身慣れていなくて、すごく不自然な感じがした。
なんで今そんな呼び方をしたんだろう。
出会ったあの頃に戻りたいと思ったからなのかもしれない。
そう、自問自答した。
「でも・・・いざ言うとなったら、一つしか思い浮かばない。不思議・・・だね」
あたしの髪が靡く程度に吹く風で、供えてある彼岸花が何処かへ飛んでいくのかと思った。
でも、飛んでいかなかった。
二本とも、墓前に置かれたまま。
「ずっと・・・言いたい事があったの。でも、言えなかった。あたし、また・・・会えると思ってたから」
墓の前にしゃがみ込んで、墓石に触れる。
その墓のある丘全体が人工の夕陽でオレンジに光って眩しく感じる。
ハイネの髪と同じ色をした、オレンジ。
「本当は・・・生前に言いたかった。・・・ごめんなさい。あたし、あんたにずっと嘘吐いてた。本当の事を言わなかった」
誰も答えてはくれない。
けれど、何処かでハイネが見てくれている気がした。
「あたし・・・あたしは、ずっとハイネの事がどうしようもないくらい、」
ざああっと、強く風が吹いた。
すると、あたしの摘んできた二本の彼岸花が風に乗って飛んで行った。
あの二本は、あたしとハイネを象徴して摘んで来たものだったのに。
そしてその時現れたハイネは、幻か、現実か。
・・・出来れば、幻じゃなかったら良いと思った。
「ずっと、好きだった」
ハイネの唇があたしの唇に触れたのは、紛れも無い現実だった。
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あとがき(言い訳)
ハイネ好きでした、大好きでした。
本当、ザフトは惜しい人材を亡くしたと思っています。
あの憎めない性格が堪らなく愛しかったです。
私の中では生きています。きっと、ファンの方の心の中でも生きています。
本当、大好きでした。
追悼夢を書かずにはいられませんでした。悲恋ですが。。
彼の冥福を心から祈ります。