今日は総悟君は珍しく仕事をしていた。
あたしは仕事が終わって暇な訳で。
近藤局長も土方さんも山崎も今は居ないし、この場にはあたしと総悟君しか居ない。
暇を潰すには、話すのが一番と解釈した訳だ。
あ る 日 の 出 来 事
「ねぇ、総悟君」
「・・・・・」
「総悟君が真面目に仕事してるなんて珍しい事もあるんだね」
「・・・・・」
「あたし今仕事終わって、かなり暇なんですよ」
「・・・・・」
「相手、してほしいんですが」
総悟君が真面目に仕事してたら返事もしてくれないのか!
山崎でも居てくれたら暇潰し出来るのに、奴は居ないし。
今あたしの暇を潰せるのは総悟君だけなんだよ!
なんか総悟君の目は何時になく真剣だし。
やっぱり邪魔しちゃ悪いかなーと思った。
「仕事溜まってるんなら手伝おうか?」
「じゃあ此れお願い出来やす?」
「あ、全然オッケー任せて!」
珍しく総悟君が頑張ってるんだ。
あたしだって少しでも彼の力になってやろうではないか。
・・・そう思ったものの。
やっぱりと言うか、総悟君の仕事内容はあたしより遥かに難しくてあたしの手は止まっていた。
「・・・あぁ〜〜疲れた!!そうだ、もう休憩にしよう!?そうしよう総悟君!」
「やっぱり言うと思った」
「え、なに、あたしがそう言うの初めっから分かってたのですか?」
「さんの事は全てお見通しですぜィ」
「はぁ・・・」
なんかさり気にすごい事言われた気がしなくもないが。
ちらっと総悟君の方を見ると彼もどうやら手を休めている。
休憩する気にでもなったのだろうか。
「あ、総悟君も休憩?」
「久しぶりにこんだけやると流石に疲れますしねェ」
「じゃあ世間話しよう!あたし初めからそのつもりだったし」
総悟君が仕事を中断してくれたのがなんとなく嬉しくて、あたしは
自分の分と総悟君の分の紅茶を淹れに行った。
両手にマグカップを持ち、コトッと机に置くと総悟君と向かい合わせになってあたしもソファに座る。
「山崎ってなんか無駄にバトミントン上手いよね」
「あぁ、俺勝った事無ぇですもんねィ」
「あたしも無いよ!その他の事でなら勝った事はいっぱいあるけどさ、山崎ってミントンだけはすっごい上手いもんね!」
「唯一のとり得って言うんですかねェ」
「うーん、ミントン上手くなかったら山崎じゃないよね」
「そういやこの前土方さんもミントンには自信があったのに山崎に負けてやしたぜ」
「ああ、だからこの前山崎を見る目が殺意に満ちてたのかー」
うーん、土方さんって意外じゃないけど負けず嫌いー、と言いながらずずーと音を立てて紅茶を口に入れる。
「・・・にしても土方さんは瞳孔開きすぎだと思うんですが」
「あれは将来はげますねィ」
瞳孔と髪の毛は関係あるのか無いのか知らないけど、総悟君もそう言って紅茶を啜る。
「土方さんって結局は皆に遊ばれてるだけだと思うのはあたしだけでしょうか」
「そんな事ありやせんぜ、俺も思ってます」
「やっぱり?上司に向かって言うのもアレだけど、なんか扱い易いって言うか?」
「単純って言うんですよ」
「単純すぎて可愛い時もあるよね」
「剣の腕前を抜きにしたら簡単に副長の座なんか奪われますぜ」
「あははー総悟君が言うとリアルで怖いよ」
「いやぁ俺本気で狙ってますしねィ☆」
「・・・・・」
なんか語尾に☆が付いてたような気がしますが。
総悟君は天使の顔して悪魔の心を持ってるから怖い。
副長の座を狙ってるって事は前々から勘付いてはいたけど、直で言われるとマジで恐ろしい。
「そう言えば話は全然変わるんだけどね」
「なんですか」
「この前道で五百円玉拾っちゃったのよ」
「あー・・・ネコババしたんですかィ?」
「失礼ね!してないよ!・・・で、其処にあの万屋の白髪パーマの・・・なんて言ったっけ」
「えー・・・坂田金時でしたっけねェ」
「金時だったっけ?まぁいいや。その金時って人が現れたのよ」
「あれ?金時でしたっけねェ」
「その話はもう終わったの!その金時って人にあたしが拾った五百円玉パクられたの!!」
力いっぱい机をバンッと叩いて立ち上がるあたしとは反対に、総悟君は未だにあれ、金時・・・?とか言っている。
「拾ったら次の瞬間消えてたんだよ!?アレはスリだって絶対!あたしの五百円返せ!!」
「流石、局長や土方さんを負かすだけあってスリの腕前も達者ですねィ」
「あたしその時金欠でさ・・・せっかくアレでお菓子買おうと思ってたのに・・・」
あたしは怒り狂ったようにわなわなと手を震わす。
食べ物の恨みは怖いんだ、とかそんな感じで。
いや、金取られただけで直接食べ物とは関係無いんだけど。
だけどあの時の空腹と虚無感は言葉では表せない。
あの金時とやら、いつか絶対この手でパンチパーマにしてやる、と密かに恨みの念を抱いていた事もある。
「だからいつかその金時って人に用がある時はあたしも呼んでね?」
「五百円ぐらい、給料あるんですから良いじゃないですかィ」
「駄目!!あたしその時金欠だったって言ってんじゃん!」
「さんって見かけによらず金遣いが荒いんですねェ」
「うっ・・・」
痛い所を突かれた。
なんか金遣いが荒い女っていいイメージしないし。
総悟君にそんな風に思われたら厭だな・・・。
「別にあたしは金遣いが荒い訳じゃなくて、この前はちょっと使い過ぎただけなのね!」
「・・・俺は別にそんなさんも好きですけどねィ」
「うん・・・ん?」
「なにか?」
「今好きとかなんか言った?え、あたしの聞き間違い?」
「聞き間違いなんかじゃないでさァ、俺言いましたから」
「え、好きって?」
「ええ」
「誰を?」
「さんを」
好きって?
総悟君が、あたしを?
え、これはマジで聞き間違いじゃないのか?
「冗談?」
「冗談なんかじゃありませんぜ、俺はさんを愛してますから」
ん?んん?
未だに状況がよく飲み込めないのはこの場にいる中ではあたしだけでしょうか。
だって、あたしは仕事が終わって暇で。
総悟君の仕事を手伝おうとしたけど難しすぎてやっぱり止めて。
それで今は紅茶を淹れてこうして話してる訳で。
「・・・総悟君」
「はい?」
「それはあたしへの告白と取って良いのでしょうか」
「どうぞご自由に」
「いや・・・ご自由にって言われても」
そういう事は相手がどう取ろうがどうでもいいものなのか?
いや、少なくともあたしは違う。
告白したのに信じて貰えなかったら厭だし。
逆に相手が自惚れてたら厭だし。
あたしにどう判断しろと言うんだこの腹黒は。
「あたしにはそれは判断し兼ねますが」
「あー、適当に判断してくれてたらいいんですぜィ」
「そ、総悟君はあたしの事がその・・・す、好きなのですか?」
「だからさっきから言ってるじゃないですかィ」
正直に言ってくれないとあたしは信じる事が出来ないのですが。
と言うか、自惚れてて違ってたら馬鹿みたいだし。
「あ、あたしは・・・総悟君が好きだよ?」
「俺もさんが好きですぜ?」
「その・・・ライクじゃなくてラブの方で、ね?」
「俺もですぜィ?」
なんでこう笑顔でニコニコしながら言うかなぁ、この子は。
流石腹黒と言うかなんと言うか。
顔が赤くなってしまうだろうが。
「・・・好き」
「はい?」
「好き、だから・・・」
「・・・多分俺はさんが俺を好きな以上に俺はさんが好きですよ」
「あたしだって総悟君が大好き。世界で一番」
まさか自分の口からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
人間、本能のままに動くとこういう言動も出来るのかと、ちょっと感動してみたりした。
そして総悟君とあたしがどちらからでもなく唇を合わせようとした瞬間、
絶妙なタイミングでドアが勢い良く開いた。
「山崎、只今戻りましたっ!!」
ドアの方を見ると、まるで何も知らないかのように無垢な笑顔で立っている山崎がいた。
「さ・・・・・え?」
どうやら山崎はあたしと総悟君がしようとしてた事に気付き、
すごい速さで顔を真っ赤にしていった。
「す、すみませんお取り込み中の所をっ!!」
だだだだだっと山崎が走り去って行った後でも、あたし達はその続きをするのは中断した。
別に厭だった訳でもなく。
でも、山崎が来てなかったら続きはしてただろうと思う。
「あー・・・山崎なんか勘違いしてない?」
「別にしても良いんじゃないですかィ?」
「あたし達って付き合ってるの?」
「なに言ってんですか。そうですぜ?」
次の日。
あの山崎が言いふらしたのか、あたしと総悟君の事は結構な話題になっていた。
あたしはそれが恥ずかしくて山崎の首を絞めにかかったりしたけど、
総悟君はまァいいんじゃないですかィみたいな感じで、あたしも結局そのペースに付き合わされて。
近藤局長にはこの世のものとは思えないくらいからかわれました。
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あとがき(言い訳)
ヒィィィなんか半端すぎて涙が・・!
好きな人とする他愛の無い日常会話はものすごく楽しいと思うのですよ・・!
少なくとも私はそうですね!(どうでもいい)
山崎は個人的に大・大・大好きです
ミントン山崎ィ〜!!
つーか未だに総悟君の口調が分かるようで分かっておりません・・!
私的にさん付けと君付けは萌えます
そして銀ちゃんの事は最後まで金時でした