俺も人の事は言えないけど。



だけど、こんな奴は初めて見た。


























眠 り

























興味というか。



俺は川原に寝転んでぐっすり夢の中にいる彼女を見ていた。
真選組の軍服を着ているという事は今は仕事中な訳で。

そして、彼女は土方さん達の目を盗んで現在進行形でサボってるという事だ。




俺が傍で見てるという事にも気付かず、相変わらず心地良い寝息をたてて彼女はまだ夢の中だ。



特に何も考えず、俺は右手の人差し指で柔らかそうな頬を突いてみる。
起きる気配全く無し。


彼女は俺に負けず劣らず寝る事をこよなく愛していると見た。





さーん起きてくだせィ、朝ですよー。土方さんに見つかったら怒られますぜー」




彼女の耳元でそう言っても起きる気配は見られず。



が熟睡してるのをいい事に、俺は調子に乗って彼女の綺麗な髪の毛に触れてみる。
サラサラしていて、女性の気品が見られる髪。
彼女は一体どんなシャンプーを使ったらこんなにもサラサラになるのだろうかと考えてみた。


俺も彼女と一緒に寝たい気持ちで山々だった。
でもそれをして土方さんにでも見つかったら残業を押し付けられそうなんで止めた。


だから今回は俺が珍しく彼女を起こそうと頑張っている訳だ。

そんな俺の努力も虚しく、は寝る事に夢中だけど。


俺としても彼女が怒られてる姿なんて見たくないし、揺すっても起きなさそうな彼女を何とか起こす方法を考えていた。
なるべく手荒じゃないやつで。




「・・・お♪」



我ながら悪知恵が働くもんだ。


俺はゆっくり彼女に近づき両手を彼女の顔の横に押さえると、彼女の唇に自分の唇を軽く重ねた。

それでもちょっと反応するぐらいで、再び眠りに入る彼女に今度は舌を入れてみた。




「んんっ・・・!・・っあ、はぁっ・・・・」




テンポよく続いていた呼吸も、突然するのを阻止されては息苦しそうに喘いだ。
なるべく手荒じゃないやつでって思ったけど、やっぱり手荒じゃないと起きそうにない。




「・・・やっと起きやした?さん」

「はぁ・・・はぁ・・・そ、総悟君!?」

「寝てたら土方さんに怒られやすぜ?」

「え、いや、それより、今・・・今・・・!?」



どうやら俺がキスをした所からは記憶があるらしく。

は顔を真っ赤にして俺に尋ねてきた。



「ああ、お姫様は王子様のキスで目を覚ますもんですからねぇ」



俺が笑顔でそう言うと、は目を逸らして体育座りをして膝に顔を埋めた。



「も、もっと別の起こし方だってあるじゃない・・・」

さんはそんな起こし方じゃ起きませんぜ?」

「・・・・・」

「だから王子様のキスで起こしてあげたんですぜ」

「え、なに自分の事王子様って言ってるんですか其れは?」

「違うんですかィ?」

「・・・・・・・・」



の顔を覗き込んでみるとやっぱりまだ顔は赤かった。



「・・・さ、行きますか」

「え?何処に?」

「仕事に戻るんじゃないんですかィ?」

「もうそんな時間なの!?」

「仕事サボってちゃ駄目ですぜ、さん」



どうやら彼女はそれほど動揺するぐらい前から眠りに落ちていたらしい。



「べ、別にあたしはサボってた訳じゃないの!ただ天気がよくて寝転んでたらつい・・・」

「だから、それがサボってるって言うんですぜ」

「総悟君に言われたくない・・・」



起きたは良いものの、未だに仕事に戻ろうとしないに俺は少し溜め息を吐いた。



「溜め息吐くと幸せが逃げるんだよ、総悟君」

「あー、大丈夫。俺の幸せは誰にも邪魔されたりしやせんから」

「なんか仕事したくないねー。こんなに天気良いのに」

「でももう夕方ですぜ?」

「綺麗な夕焼けじゃん」



沈んでいく太陽を眺める彼女の顔は美しかった。

夕方のオレンジ色の太陽が彼女を染めていった。



「あー、でもやっぱり戻らなかったら土方さんに怒られるよね」

「怒られなかったら槍でも降ってきますぜ」

「今夜見たいドラマの再放送あるから、行こっか。総悟君」



すくっと立ち上がったは、俺にも立つようにと手を差し伸べてくる。
俺はやれやれといった感じでその手を取り立ち上がった。



さん、普通はそういうのは男がするんじゃないですかィ?」

「え?ああ、うんそうだね。でも一回やってみたかったの」

「貴女ってなんか色々と変ですよね」

「そう?よく言われるけどねー、あたしにはそういう自覚無いんだ」



にこっと笑うにつられて俺も笑った。


一緒に並んで歩いていると、後ろから声がかかった。



「おい!テメェ等何サボってんだ!!」

「げっ、土方さん」



振り返ると其処には声の主と思われる真選組副長の土方さんがこっちに向かって走って来ていた。



「総悟に、帰りが遅いと思ったらやっぱりサボってやがったか!」

「べ、別にあたし達はサボってた訳じゃないんですよ!ただ眠くなってごろんと・・・」

「それは立派なサボりだ!」



何時もに増して瞳孔が開き気味の土方さんが容赦なく怒声を響かせる。

川原で遊んでいた子供達が不思議そうな目でこっちを見ている。
情けない。



「もうすぐ見たいドラマの再放送があるのでさっさと帰してくれやせんか、土方さん」

「お前ふざけんな、総悟!!」

「つーかあたしは低血圧ですから起きるのとか大変なんですよ!」

「仕事中に寝るからだアホ!」

「そんなにカリカリしてたらハゲますぜ?」

「テメェ等の所為だろうが!!」



土方さんが本気でキレ始めている。
ああ、これはヤバいなと本能的に察知した。



さん」

「ん?」

「逃げやすか」

「ラジャー!」



俺とは同時に駆け出した。

それはまるで怒っている親から逃げる子供の様に。



「あっ、おいテメェ等!!」



後ろで叫んでいる土方さんは気にしない。







俺があの時の隣で寝なかったのは上司に怒られるからとかそんなのじゃない。

寝たら見れなくなるから。
の綺麗な寝顔が、見れなくなるから。


でも、それは今は本人には黙っておこう。






















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あとがき(言い訳)

初銀魂です マイラヴァー沖田さんです
沖田さんの腹黒さが大好きな今日この頃
とにかく土方さんは出演させてみたかった 沖田さんとの口論とかで