突然ガチャリ、という金属音がしたと思うとそれは黒い鉛の塊でその銃口はあたしの額に向けられていた。
その時あたしは何を思ったのかは忘れたけれど突然のその行動にあたしの動きがぴたりと止んだのは覚えている。
この目の前の人殺しの道具を握っているのは六道骸。
彼の瞳は確実にあたしを見据えていた。
「」
「なに」
「・・・無反応ですか」
彼はどうやら驚いて欲しかったらしく、あたしの反応がお気に召さなかったようだった。
構えていた銃を下ろしたかと思えばあっという間にあたしに背を向けた。
だからあたしも読んでいた雑誌に目を戻した。
「はあれですね、反応が淡白すぎます」
「そうかな。気のせいじゃない?」
「気のせいじゃありませんよ。もし僕があそこで引き金を引いていたら今頃死んでましたよ」
「でも、引く気無かったでしょ?元から」
お、当たった。
あたしは初めて骸さんに勝ったような気がして上機嫌になった。
「保障はありませんけどね。どうしてそう思うんですか?」
「んー、勘、かな。女の勘は鋭いのです」
「そうですか。面白い人ですね」
「それに、骸さんがあたしを殺すはずないから」
「・・・そうですね」
パラ、と新品の雑誌を捲る音が響く。
あたしの好きなブランドの今年の新作モデルがなかなか良かった。
お小遣いを貯めて買ってやろうと小さく心に決める。
「でも、貴女を見ていると時々殺したい衝動に駆られます」
何時の間にか目の前に来ていた骸さんに顎をクイ、と持ち上げられ、視線は強制的に彼に向く。
あたしはMじゃないから顎持ち上げられるのは嫌いなんだけどな。
「どういう意味?」
「もし貴女が他の誰かに殺されるなら、その前に僕が貴女を殺したい」
「あー、時々そういう人居るよね」
「本気ですよ?」
にっこりと、今度はナイフをあたしの喉へ当てた。
この人はそんなにあたしに驚いて欲しいのだろうか。
これには流石のあたしもどきっとしたけれど。
「・・・こういうのはM属性の女性にしてあげて下さい」
「おや、これは流石に驚きますか」
「違います、首の周りに空気と髪の毛以外の物が当たるのが許せないだけです」
毎度の事だけれど、どうしてこの人はこんなにもSなんだろう。
何の反応も示さないあたしを見ていて果たして楽しいのだろうか。
この人の考える事はよく分からないな。
「あたしは別に誰にも恨み買ってるつもりはないから、殺されたりしないと思うよ」
「そうですか。じゃあ、自殺したい時も呼んで下さい。僕が貴女の代わりに貴女を殺しますから」
「うわ、自殺もですか」
と言うか、早く会話の内容を変えたい。
一体何なんだこの会話は。
あたし、一応一般ピープルなんですけど?
「どうして骸さんは、そんなにあたしが死ぬ事に執着してるの?」
「貴女が誰にも知られずに死ぬのも厭だし、貴女の最期を見届けるのは僕だけで良いからですよ」
「・・・ふーん」
相変わらず良く分からない返答をする人だ。
時々この人の考えには付いていけない。
「あと、が僕以外の男を好きになった時は僕が貴女を殺します」
「それ、ストーカー」
真剣に話している骸さんには悪いけれど、あたしは七割方聞き流して適当に返事をしている。
まあ、気付いてるだろうけど。
雑誌を読みたいんだ、いい加減こっちに集中させてくれ。
「つまり、が生きる道は一つしか無いんですよ」
僕を愛しながら一緒に生きたいと望むこと。
「じゃあ、あたしが死ぬ時は骸さんに殺されるんだね」
「そういう事ですね」
その時は、一緒に死にましょう
殺 し た い 衝 動
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あとがき(言い訳)
意味不明ですが一度書いてみたかったネタ。
設定としては骸→ヒロインなんでどの道骸さんに殺されるんですね
骸さんになら殺され隊(黙れ)